『歎異抄』に帰る

-新迷林遊林航海記

お見舞いができない

母に運転手を頼まれてご門徒のお見舞いに行ってきた。

昨年とうちゃんが亡くなってからかあちゃんは弱った。会話がまわった。とうちゃんが亡くなった日の夕食の刺身の話を必ずする。耳が遠くなった。しばらくして入院をしてポリープをとった。退院したけれどみるみる痩せてガンだろうとと聞いた。先月のとうちゃんの月参りにいなかった。

かあちゃんは違う人みたいだった。

母は、「ああ、どうしたんね。」といって体をなでた。「寒いからもうしばらくここ(病院)におって、春になったら出るがんに、がんばらんなん!」と声をかけた。かあちゃんはうなずいた。家にいるときよりもちゃんと会話ができた。

病気で弱って、がんばっているひとに、がんばろうというのは、酷なのかもしれない。けれども、何もいえなくてかたまっている私よりはずっといい。子どもみたいだな、子どもより悪いか。お世話になった人に病気のお見舞いができない。