『歎異抄』に帰る

-新迷林遊林航海記

男の坊さんはいないのか?

ある日、ご門徒のおじいさんの訃報を受けて枕経に行ったら、「あん、女?男の坊さんはいないのか?」とけげんな顔で面と向かって言われた。

「おいこら、じじい、そんなら勝手に連れてこい、もう知らんわ。」→直帰

と言いたい気持ちを、大人だからとぐーっとこらえて、お勤めしたのを覚えている。当寺のお手次のご門徒は村の中や車で5分以内のところなどだいたい近い所にあり、お互い離れた所に住む家族のように付き合っているので、跡取りの私が枕経に行ってもそんなことをいわれたことがないので驚いたし、正直傷ついた。逆に勉強にもなったと思う。じじいは亡くなった方の親戚で、喪主の家族ではないことはしばらく座っていればわかった。と、昨夜話したら、だんな(住職)が、「その時、俺が通夜説法をしたのだけど、話が終わって退出している途中にでかい声で、あんた声が小さすぎる、と怒鳴られた。」といって思い出して怒った。

また同じことを言われたら、「そうでしたら、あなたがどなたか連れて来てください。私は帰らしていただきます。門徒をやめていただいて結構です。さようなら。」と、言っていいと、住職から許可をもらった。

8年たって、じじいは弱った。畳に座ってお斎を食べるのもままならない様子だった。住職の代理を、通夜説法も葬式の導師も、女の私が勤めたが、用意して行った言葉がいらなかった。