『歎異抄』に帰る

-新迷林遊林航海記

切手泥棒

遊林、「切手シートを盗ったでしょ!どこへやったの!」
といって、三日間鬼の形相で睨み続けた。
数日後、お兄ちゃんに、
「ここに入っていたはずの高額な切手シート、あんたが抜き取って、どこかへ売ってきたのね、
あんたは運転免許をもっている、間違いないわ、私は知っている。」
知らない、そんなことをしていないといっても聞き入れなかった。
私には、「警察を呼んだらはっきりすること、指紋をとって調べてもらう!」と、言った。
調べてもらえばいい、高額切手シートが抜き取られていたコレクションブックには母の指紋だけが付いているだろう。
数日間、お兄ちゃんは疑われた。
私は頭にきて、「探したのか、お兄ちゃんに謝れ!」と、怒鳴りつけて声がかれるほど間違っているといって、110番通報した。駐在さんが二人来て、話を聞いてくれた。
母は、お兄ちゃんが盗ったと疑わなかった。
今日、妹が島根から7時間かけて帰ってきて、
5分で見つけた。
お兄ちゃんは、母を責めるなと私に言った。
妹が、「人はどれだけ長く共に時間を過ごしても、相手を心から信頼することができないもの。自分の物が無くなったら盗まれた、あいつが盗んだと思うもの。そして、心から愛することなどないものなんだよ。」といった。
「だから、信頼し、愛してくれる人を大事にしよう。」

如来の慈悲を大悲という。人は悲しみの存在。迷い、苦しみ、傷つき傷つける。