『歎異抄』に帰る

-新迷林遊林航海記

衣(ころも)を注文した

消費税が8%になる前に、やっておかねばならぬことがある。と、一月から自分にいいきかせていたのだが、今日やっと果たした。

衣(ころも)を注文する。

おじいちゃんおばあちゃんのお陰だな、おばのちーちゃんのお陰でもある、あの時ついて来てくれた妹のお陰でもある、うれしくなっていろいろ感謝したい。

金沢でも衣は買えるし、買ったこともある。ひいきにしてる法衣店(ほういてん)もある。

でも僧侶の学校に行くときに作った京都の柴田法衣店(しばたほういてん)で作った間衣(かんえ)は10年もった。

そうでないのを2枚買ったがどちらも2年もたない。衣は浴衣(ゆかた)などと違って繊細な装飾が多いので痛みも激しい。

2年前、おじいちゃんおばあちゃんのお骨を、従妹の結婚式の帰りに、本山に収めた。「ついでなんて!」と、ばあちゃんは怒りそうだが、じいちゃんがなだめてくれるだろう。宿泊先の大阪のホテルから交通機関を乗り継げば、京都駅から歩いてすぐの東本願寺へ目指すことはそう難しいことではない。でも内心不安だった。その時に妹もついてきてくれて、頼りになったし、たすかったし、うれしかった。

妹が、「おばあちゃんがいつも言っていたね、衣は柴田が一番だって。」と、いった。私は覚えてなかった。おばあちゃんは着物を縫っていた。きちんとした仕事をする人だった。その人がいうんだから疑う余地はない。柴田の衣はいい。

 

話が長くなったがその時に、念願の柴田法衣店で測ってもらって間衣(かんえ)を二枚注文した。「お膝元で、ブランド店で、間衣を買うのだ!」と10万持って行ったら、2枚以上買えたので肩すかしをくらった。僧侶の学校で使っていたのと同じやつと、正絹に近い風合いのいいのを買った。1カ月ほど待って届いた。ほんといい、ほんといい。勝負間衣なのである。「お説教するとき着るの?」と聞かれたことがあった。着ません。黒板とチョークのところでは、勝負間衣は絶対着ない。汚れるもの。間違えて着て行った、あるいは「前日ホワイトボードだったのに、ご門徒さんが反射して見にくい、といわれたので、今日は従来通り黒板で」ということがあったが、チョークは粉を固めてあるから粉だしはらえばある程度はおちる。

 

とにかくその時の私のデータがあるから、今後は電話で注文するだけで良いのだ。

ということで、今日は冬物の間衣を注文した。生地はぴんきりである。友人が柴田法衣店の冬物を持っていて、「そういえば、持ちがいいわあ。」といっていたやつは、背中に光る青い裏地がついていた。冬物にはみんなついているので有力な情報にならず、「おいくらぐらいのご予算ですか」とたずねられたので「せっかくだから安いのは嫌で、一番高いのも嫌で、正絹は嫌で、3万くらいなのかな。」なんて厄介な客だが、26000円くらいのと、27000円くらいのと、33000円のを勧めてくれて、「33000円のはメーカーが生地を作らなくなるのでもう最後の注文になります」と、「前二つはスーツの黒で、33000円のは礼服の黒です。」電話で説明するのは大変だろうに、とっても丁寧に接してくれた。「生地見本を送りますか?」とも言ってくれたのだけど、見たって悩むに違いないので、27000円のを買うことにした。

優しい方だったので、「実は裳附(もつけ)も欲しいんです。薄丁子、ピンクみたいやつで、冬もので」「三角みたいの要りますか?」「いりません」。三角みたいのは主にお葬式の導師の時に使いますが、あまり出番はなく汚れてもいないので今回は作りません。「では27000円です。」「そんな安いの!」

「忙しい?大丈夫?白衣(はくい)も頼んでいいですか。」「はい、ユニチカメガーナ冬用があります。」ネットのHPを見ながら電話していたので、「こちらに書かれているハイウール冬用厚地は男性用だけですか?」と聞くと、「そうですね、どうしても男性用の物が多いですね。こちらはとても重たいから178cmの男性ならいいのですけど、女性には重たすぎると思いますよ。」と教えてくれた。

親切な対応でうれしかった。

27000円の裳附と、12600円の白衣と、27000円の間衣とやっぱりこの機会に33000円の間衣も注文。

「間衣のデータがあれば、裳附の注文も出来るよ。」と教えてくれた先輩にも感謝したい。

裳附は13年着た。まだまだ使えるけれど、襟がすごく汚れてる。冬物の間衣は崩壊寸前。紐が無くて安全ピンでしか対応できないところがある。気をつけているのでお尻は破けていないけど、袖も腹もチクチクと全体直してある。冬物は「紗」や「絽」の物と違って直すのは簡単、でも黒がはげてきた。結ぶ紐は何度も強化した。今見たら襟が外れてきてる。間衣の使用頻度は高い。

楽しみだな~、「柴田法衣店」ってタグがすでにうれしいのよね。33000円のは冬用勝負間衣にしよう。

追記、白衣(はくい)について、柴田法衣店では「はい、はくえですね。」と対応してくれたと思う。「はくい」というのはなまりみたいなものかもしれないが、祖父母がそういっていたのでうちではそうよんでいる。そういえばばあちゃん「かんい」といっていた気がするが、「かんえ」は自分の中で定着している。

ウィキペディアで「呉音」を調べた。

仏教の言葉は呉音で発音することを、先生に教わったことがある。「衣」は漢音では「い」、呉音では「え」。「え」が正解みたい。