『歎異抄』に帰る

-新迷林遊林航海記

人知るもよし人知らざるもよし 我は咲くなり

小雨を長靴を履いて山に向かって歩いた。いち早く春を告げてくれた山桜にお別れを言いたかった。
桜は並木道もアーチも素敵だけど、木々の中にこつ然と咲く姿を遠くから眺めるのが何より好き。有名な、

人知るもよし人知らざるもよし 我は咲くなり
武者小路実篤

の言葉を彷彿とする。山に入りてふと顔を上げると春を報じられる。
山桜は早咲きが多く、残念ながらすでに花を落とし、遠くからだと木々と一体化してもうわからなくなっていた。それがまたよい。
曇り空と遅咲きの桜を撮りました。散歩では誰にもすれ違うことがありませんから、この桜も人知らざるもよしです。昨日のニュースでは東京の桜は花見の時期を過ぎたようだけど、能登は満開だと告げていた。
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「我は咲くなり」で検索すると、武者小路実篤記念館のHPに、この言葉は、文学作品からの引用ではなく、実篤が野菜や花などを描いた絵に書き添えた「讃」とよばれる短い言葉であることが書かれていた。「詩」というより「讃」であるところに感謝を感じる。なんというか桜に光を感じるような、自然、いのちの輝きというのかもしれない。「いのち」「光」「感謝」おお、念仏っぽい。

www.mushakoji.org

「人知らずもよし」の前に、「天与の花を咲かす喜び 共に 咲く喜び」という言葉があるようで、「我は咲くなり」の前にも、「されど」があるらしく、そもそも、「人知らずもよし人知るもよし」ではなく「人見るもよし 人見ざるもよし」のようで、

天与の花を咲かす喜び 共に 咲く喜び
人見るもよし 人見ざるもよし
されど 我は咲くなり

なのかもしれない。一度HPに書かれている全集を手に取ってみたいと思った。

詩とは違い、絵に添えて書かれるため、本にまとめられていませんが、小学館版『武者小路実篤全集』では第11巻(絶版)の82ページに「画讃一束」と題して収録されています。
また、『武者小路実篤画文集』全6巻(福武書店 1985年 絶版)には、言葉を添えた書画が数多く掲載されています。 武者小路実篤記念館HPより