お散歩道草 osanpomichikusa 

-続迷林遊林航海記

性差別の問題や時代社会に追従してきた教えの問題をともに訪ねる②

弥陀の大悲ふかければ
 仏智の不思議をあらわして
 変成男子の願をたて
 女人成仏ちかいたり

浄土和讃」10

親鸞聖人のご和讃に、こんなダサい言葉がある。

なんだかはっきりわからなくても、確実に気分が悪い和讃である。

女は、「男になって」成仏する。

 

お葬式のときに、「正信偈」と「和讃」を勤めるが、「葬儀中陰勤行集」に、亡くなった方が男性の場合は、

本願力にあいぬれば
 むなしくすぐるひとぞなき
 功徳の宝海みちみちて
 煩悩の濁水へだてなし

高僧和讃」天親菩薩3

を勤め、亡くなった方が女性の場合は、 

弥陀の大悲ふかければ
 仏智の不思議をあらわして
 変成男子の願をたて
 女人成仏ちかいたり

浄土和讃」10

 を勤めると、書かれている。

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※『葬儀中陰勤行集』東本願寺式務部校閲
15.0×11.3 117頁 1976.11 978-4-8318-9205-8 法蔵館

大谷派経典。和綴本・寺院用。枕経、葬儀式還骨勤行、中陰勤行。付録として葬儀とその前後の行事次第を説明。(法蔵館HPより)

 

葬式の和讃は導師が決めるので、導師になることがほとんどない私は和讃を決めることはないけれど、私が導師なら、女性が亡くなっても「本願力にあいぬれば」にする。

 

前置きが長くなったけど、今回の研修会の菱木先生のお話で特に印象的だったのは、この”なんだかはっきりわからなくても、確実に気分が悪い”「変成男子」のことである。

 

菱木先生の資料より

資料『法華経提婆達多品』に登場する女人五障説と変成男子説

 時舎利弗語龍女言。汝謂不久得無上道。是事難信。所以者何。女身垢穢非是法器。云何能得無上菩提。仏道懸曠径無量劫。勤苦積行具修諸度。然後乃成。

女人身猶有五障。一者不得作梵天王。二者帝釈。三者魔王。四者転輪聖王。五者仏身。云何女身速得成仏。

(中略)女言。以汝神力観我成仏。復速於此。当時衆会皆見龍女。忽然之間変成男子。具菩薩行。即往南方無垢世界。坐宝蓮華成等正覚。三十二相八十種好。普為十方一切衆生。演説妙法。

【時に舎利弗龍女に語って言わく、汝久しからず無上道を得(う)と謂(おも)えども是事(このこと)信じ難し。所以(ゆえん)はいかん、女身は垢穢(くえ)にして是れ法器に非ず、いかんがよく無上菩提を得んや。仏道は懸曠にして無量劫を経て勤苦して具に行を積み諸度を修め、然して後に乃ち成ず。

又女人の身に猶し五障あり、一には梵天王に作(な)ることを得ず、二には帝釈、三には魔王、四には転輪聖王、五には仏身なり。云何が速に女身成仏することを得んや。

(中略)女の言わく、汝の神力を以て我が成仏を観よ。復た此れよりも速かならん。

当に時に衆会の皆、龍女の忽然の間に男子に変成して菩薩行を具して即ち南方無垢世界に往いて宝蓮華に坐し等正覚を成じ三十二相・八十種好を(具え)普く十方一切衆生の為に妙法を演説するを見る。】(鳩摩羅什訳『妙法蓮華経』)

鳩摩羅什訳『妙法蓮華経』にほぼ対応するサンスクリット本がある。サンスクリット本には「女身垢穢」の表現は見当たらない

【傍線部の現代語訳】
「婦人は今日に至るまで五つの地位を得ていない。五つとは何であるか。第一はブラフマンの地位、第二はインドラの地位、第三は大王の地位、第四は覇王の地位、第五はひるむことなくさとりを求めるものの地位である」。
 「さて、そのとき、サーガラ竜王の娘は、一切の世間の人々の見ているところで、また長老シャーリプトラの見ているところで、彼女に女性の生殖器が消えて男性の生殖器が生じ、みずからさとりを求める者となったことを示した。」

【変成男子説とは】
女性の肉体が男性の肉体に変化すること。五障の解決策として登場する。性差の転換であってジェンダーの転換ではない。

 

【講義メモ】

法華経が説かれている最中に、説いているお釈迦様は(神通力で)その像だけを残して、
観経の王舍城耆闍崛山韋提希のところに行っていた。
先生釈尊(の像)がしゃべっているときに、文殊と智積(ちしゃく)が、私語している。(けしからん)それは、彼らが聞いた噂話で、「海の中で、八歳になる龍王の娘の龍女がさとりをひらいた。」のだという。その場に舎利弗がいた。舎利弗は先生釈尊の話よりも、文殊と智積の噂話を聞き入り、真偽を確かめに龍女に話を聞きに行った。
その聞き方がなんとも感じが悪い。

舎利弗いわく、「あなたが最近さとったというのは、信じがたい」

「女身は垢穢(くえ)」であり、法を受け止める器ではない。なぜさとることができるだろうか、いやできない。仏道は長い修行の時間があって成ずるもの(八歳でさとるのはおかしい)。

 また女人の身は五種の障礙がある。すなわち、梵天王に作(な)ることができない、二には帝釈、三には魔王、四には転輪聖王、五には仏身となりえない。
なぜ女身が成仏することがあるだろう。だから仏になるはずはない」

(中略)むすめはいった。あなたの神通力を持って、私が成仏したときのことを観るがいい。

そのとき、サーガラ龍王の娘は、一切の世間の人々の見ているところで、また長老舎利弗(シャーリプトラ)の見ているところで、彼女に女性の生殖器が消えて男性の生殖器が生じ、みずからさとりを求める者となったことを示した。

女は、「男になって」成仏する。 

講義では変成男子(女性の肉体が男性の肉体に変化すること)は女性差別の解決策にならないと語られた。それは時代社会に追従してきた教えの問題である。では私はどうしていくのか。差別問題を学ぶときにいつも選ばされる思いがする。

 

お葬式で「変成男子」の和讃を選ぶ住職がいる。「この人は、女性差別の問題に関心がないのだな」とため息をつく。