常不軽(じょうふきょう)菩薩とは、誰と出会っても「あなたは仏性を宿し、やがて必ず仏になられる尊い人です」と声をかけて合掌し、礼拝したという。そのとき気でも狂ったのかと石を投げつけられることもあった。しかしその時でもそのことをやめなかったという。法然上人は、その常不軽菩薩こそ念仏者のことであると見られていた。〈中略〉隣にいる他者も我々と同じように阿弥陀如来より、「あなたは仏性を宿し、仏に成ろうと願っていて、やがて必ず仏に成られる尊い人です」と呼びかけられ、その阿弥陀仏に信じられ、敬愛されていることを知ることにもなる。そのことが我々が本願に遇い、念仏者となったことのしるしである。
『竹中智秀選集第1巻』184頁
レポートが仕上がった。
講義で上杉聰先生が「人間の最も深い欲望は、大切にされたいということである」といわれたことが印象的だった。他者に大切にされることに執着するので、"軽蔑された"被害者意識が暴走する。私が大切にされたいから、私を大切にしてくれる他者として、他者を大切にしたい。
と、結んだ。
それは「常不軽菩薩」の物語を彷彿とした。『法華経』に登場する菩薩。この菩薩の話を、私は30年前に大谷専修学院で聞いた。
そして、その言葉は、私が知らない誰かにとっても、手を合わしたくなるような言葉なのだ思う。